2015年12月26日土曜日

目と目と手と手

「握手して、それでどうするの?」と、48グループのファンでない人によく聞かれる。
私は握手できるかどうかは別にどうでもよくて、
大切なのは、普段は客席で、あるいは画面越しに一方的に受け取っているものに対して、
面と向かってフィードバックができるということだ。
そもそも私は手汗がひどい体質で、両手でしっかり手を握ろうものなら、
あっという間に手が熱を持って汗びっしょりになってしまう。
あまり不快な思いをさせないためにも、私は普段右手を軽く握るだけで、
左手は会話の際の身振り手振りに使うようにしている。

12月23日に福岡で行われた6thの個別握手会は、
梅本泉にとって地元福岡での最後の握手会となった。
言うまでもなく劇場を中心として活動してきたメンバーである梅なので、
ファン層も地元に多い印象で、今回が最後という人も多かったのではないだろうか。
カーテンコール的な意味合いで来月の握手会にも参加するとのことだが、
関東会場は混みそうなので、私は2月の振り替え分は今回使えるだけ使うことにした。

ひとまずはいつも通り、時系列順に叙述形式でレポートを記しておきたい。

◆2部 岡本尚子

実は直前の土曜日、大学の先輩が福岡に遊びに来ており、
一緒にただいま恋愛中の初日公演をロビー観賞してきた。
その際におでかけでなおぽんが行っていたあかちょこべで昼食をとったので、その話をした。
ただあかちょこべで飯を食ったというだけでは大した話題ではないのだが、
なんとそのときにテレビの取材を受けてしまったのだ。
日テレ系のFBS福岡放送という九州ローカル局で2月13日に放送する、
「九州まるごと!」という番組内で我々がうどんを啜る姿が流れるかもしれないらしい。
うどんが出てきたときにリアクションを求められたのだが、「おお~」としか言えなかった。
なおぽん先生のリアクションの素晴らしさを身をもって実感した次第である。
当の先生も「絶対見るね!」と社交辞令を言ってくれた。流石だ。

◆2部 村川緋杏

横浜全握でのD2レーンが楽しかったので、緋杏を4枚買ってみた。
2枚ずつ2回ループしたのだが、緋杏のテンションは間近で浴びるとかなり強烈だ。
生誕祭に入った話をしたら突然「背高いですね!!!」と全然関係ないことを言ってきて、
「私なんてこんな厚底履いて台に乗ってるのに!!!」と足を上げて靴を見せてくれた。
とにかく声がでかいので圧倒されるが、
特に話題を考えていなくても流れでどうにかなりそうなタイプなので、
握手会初心者にはおすすめのメンバーかもしれない。
デビューして間もないのにこういう安心感のあるメンバーはなかなかいないだろう。

◆3部 村重杏奈

何気に握手会でしげさんと喋ったのは初めてである。
まあ座長公演で10回も見たし、劇場でも3回見ているので今更ではあるが、
近くで見ると信じられないくらい可愛い。
話し方も変にハイテンションではなく、普通に楽しく会話ができる感じだ。
公演MCを見ていても思うが、基本的にしげさんは頭の回転が速いので、
知識面はともかく、喋りで相手を楽しませるスキルは非常に高い。
今回が初めての握手だったので、昔からの成長という意味では何とも言えないが、
初期の頃の出演番組で一発ギャグばかり連発していたのを見ていると、
きっと前から推している人はお姉さんになったものだと感慨深く思っているに違いない。
話の内容としては、しげさんはみなぞうと共に私が初めて生で見たメンバーなので、
そのあたりのことと座長公演に軽く触れる感じだったのだが、
「それですっかり村重推しになっちゃった?」と冗談っぽく聞かれて、
また「いや、梅推しなんだけど、来年からどうしようかと…」と正直に言ってしまった。
畳み掛けるように「村重にしときなよ!」と熱烈な売り込みをされたので、考えておこう。

◆3部 上野遥

しげさんにそんなことを言われた直後ではあるが、次の推しメン候補筆頭のはるたんである。
はるたんといえば、ハロウィン公演でハンターに投票してくれたお礼を言わねばなるまい。
「ハンターに投票してくれたよね?」と言うと、だんだん表情が驚きに変わっていき、
「え?え?あのときのハンターですか?」と100点満点のリアクションをしてくれた。
「その節はありがとうございました」と言ったところでやたら早く剥がされたので、
本当にそのことを言いに来ただけのような感じになってしまった。
次回はもっと券を確保して、じっくり話をしたいものだ。来月の再販とかないんだろうか。

◆3部 田中美久

熊本に引っ越してきたということで、田中美久の券を買わないわけにはいくまい。
がっつりローカルな話をしているうちに、
意図せず若干プライベートに抵触する情報を引き出してしまったので、
具体的な内容は心の中に仕舞っておくことにする。
どうやら美久さんは滝川パンは熊本から福岡に移転したものだと勘違いしているらしく、
結局その情報を修正しないまま帰ってきてしまった。
755か何かで言っておいた方がいいだろうか。

◆4部 外薗葉月

葉月はファッション見たさで券を買ったようなものなので、
何を喋っていいかよくわからなかったが、
しぇからしか特典映像での動物園ファッションは大変可愛らしかったので褒めておいた。
敬愛する梅さんが卒業するタイミングで怪我をしたことで悔しい思いを抱えていると思うが、
そういう複雑なニュアンスの話をするには2枚出しは少なすぎることはわかっていたので、
一言「足、お大事にね」とだけ言っておいた。
きっと葉月は梅さんのいなくなった劇場を、以前にも増して盛り上げてくれるはずだ。

◆4部 下野由貴

下野さんもハンター支持者の一人であるため、お礼参りに。
「お会いできて嬉しいです!」と何やら畏まった敬語で応対されてしまったのだが、
一体メンバーの間でハンターはどういう位置付けになっているのだろうか。
下野さんは自分の握手会を「友達感覚」と自己評価していたが、
まさしく言い得て妙で、話していて不思議な安心感があった。
いつの日か下野さんとはるたんのWセンターを夢見ている話など、
当然2枚出しではできるはずもなく、「また来ます」とだけ言っておいた。

◆4部 田中美久

美久さんは3部と4部を合わせて8枚買っていたのだが、今回は部の後半に4枚出し。
美久さんには徹底的に熊本の話題を出すと決めていたので、ラーメン天外天の話をした。
市電水道町駅から歩いてすぐ、鶴屋百貨店の本館と別館の間をくぐった先にある、
地元では有名なラーメン屋である。美久さんも店名だけは知っていた。
関東で言うところのらあめん花月嵐のような店で、とにかくニンニクの量が凄まじい。
この日の前日にも会社の送別会の五次会で連れて行かれ、
翌日握手会だと知っている先輩たちに面白がって食わされそうになったのだが、
断固拒否して私はおにぎりを2個だけ注文した。というかそもそも腹がいっぱいだったのだ。

◆昼の部 梅本泉

ここからは全て梅との握手だ。昼の部は12枚買っていて、3枚と9枚で2ループした。
今まで梅を公演で見たのは3回、奇しくも最終ベルとシアターとパジャドラを1回ずつである。
特に博多座期間に初めて劇場で梅を見たシアター公演は印象に残っていて、
そのときの思い出話などをした。
本当は小刻みにループしたかったのだが、当然ながら梅レーンは非常に混雑していて、
2ループ目は9枚まとめ出しをせざるを得なかった。
仕方ないので腹を括って、ギターを習うということについて真面目に話をしてみた。
次の部の話でも何度か出たのだが、
梅は「自分の好きな音楽をやりたい」ということに拘っていた。
少なくとも私よりはずっと音楽業界の中身を見てきた彼女が言うのだから、
きっと確たるビジョンがあるに違いない。
私は趣味でクラシックギターをやっているが、最初の4年はまるで下手くそだったこと、
先生について習ってからの2年で劇的に変わったこと、
人に見られながら演奏することの大切さなどを、自分のなけなしの経験から絞り出し、
なんとか彼女の役に立てないものかと頑張って語りかけた。
私が今年入選、入賞を果たした二つのコンクールは、
冗談抜きで彼女たちの頑張る姿を思い浮かべたら自然と緊張が解れ、
いいパフォーマンスができたことの結果だと思っている。
せめてものお礼として、何か私の話が梅さんの今後の活動のヒントになればいいのだが。

◆5部 梅本泉

昼の部と同じく、3枚→9枚の2ループ。
3枚の方は真面目に話すような時間でもないので、スラムダンクの話をした。
梅さんは安西先生が好きだとのことだが、
私は魚住さんのファンだと言うと「めっちゃ渋いやん」と笑われた。可愛い。
私の高校時代の友達にスラムダンクを穴が開くほど読み込んでいる男がいて、
私も物心ついた頃から毎日繰り返し読んでいたので、
彼とはスラムダンクの台詞だけで会話ができる。
そんな他愛もない話だが、笑ってくれたのでよしとしよう。
2ループ目はまたちょっと真面目なトーンで、
シンガーソングライターがやるべきことの中で、何が一番難しいかということを聞いてみた。
具体的には、作詞、作曲したものを演奏して歌うという4つに加え、
売れようとしたら可愛い必要がある(これは冗談っぽく)という選択肢を提示したのだが、
「可愛いのが一番難しい」と冗談で応えてくれた後、
「作詞はずっとやってるから大丈夫」と意外な答えが返ってきた。
自信満々ではないが、逆にその落ち着きが確たる自信を感じさせる表情をしていて、
私はこの一瞬のやりとりで、
「作詞が一番難しいのではないか」と短絡的に考えていた自分の浅慮を恥じた。
梅さんは「私はそんなに売れたいわけではない」とも言っていた。
というのも、「自分の好きなようにやりたいから」とのこと。
そしてこれは私が言おうか言うまいか迷っていたことだったのだが、
「普通の職業に就く傍ら音楽を続けるのでもいい」ということも本人の口から聞いた。
私も学生時代、クラシックギターを仕事にしようかという考えが過ぎったことがあるのだが、
スタートを切るのが遅かったことと、決して効率のいい仕事ではないこと、
そして何より、ギターを「仕事」として処理し続けなければならない生活への恐怖が勝り、
クラシックギター業界へ足を踏み入れることはしなかった。
余程突出した才能があるのでなければ、
生計を立てるための仕事と好きなことである音楽は切り離して考えるのが、
実はいい音楽を生み出すための最も効率的な方法なのではないかと私は思っている。
少なくともクラシックギター業界でそうやって生きている人たちを私はたくさん知っているし、
一本気にならずに、そういった選択肢にも梅さんが目を向けているということを知って、
私はえも言われぬ安心感を感じるのと同時に、
「この子はこんなにも大人になっていたんだ」ということを思い知って、
切ないやら何やら複雑な気分になってしまった。

◆6部 梅本泉

本来は5部までしか買っていなかったのだが、2月の振り替え分24枚のうち8枚を6部で使用。
だんだん長く話すのに慣れてきたので、ここでも8枚をまとめ出しすることにした。
3周年の脳パラの思い出話などしていたのだが、自然と話題が身長の方に行ってしまった。
しきりに「最近葉月と並んだ」「梅は伸びて葉月は止まってるから並んだ」と主張するのを、
「嘘だ」「絶対嘘だ」と次々に否定するも、ドヤ顔で決して譲ろうとしないので、
もしかしたら本当に伸びているのかもしれない。
ちなみに私は夏頃まで自分は179㎝だと思っていたのだが、
転職時の健康診断で何度測り直しても180㎝だったので、
「26歳にして1㎝伸びた」と誇張を含んだ言い方をしてみたところ、
「嬉しかったでしょ!170台から180になりたかったでしょ!」と謎の共感をされた。

◆7部 梅本泉

この日最後の握手も8枚まとめ出し。
色々話してみて、私の心のつかえは綺麗さっぱりなくなっていた。
寂しいものは寂しいが、しっかりと自分の芯を持っていて、
何を聞いてもスラスラと未来を向いた答えが返ってくる、
その何かを見上げるような顔は、今までに見たどんな表情よりも美しく見えた。
私は普段、メンバーに向かって何かをオーダーするようなことは決してしないのだが、
この日は一つだけ、「卒業公演、いいもの見せてくださいよ」とお願いをしてきた。
これまでも大して交流はなかった単なる一ファンの身勝手な話に、
楽しそうに、しかしこちらが真面目なトーンで話せば真剣に、
とことん付き合ってくれたお礼の気持ちを伝えるために、
最後だけは汗をかくのも気にせずに、両手でギュッと小さな手を握って帰ってきた。

7部は1時間以上押して21時過ぎまで続いた。
大量のまとめ出しについては私は全く理解できないタイプであることに加え、
この日は終了後に横断幕を用意してお見送りをする企画があったため、
普段なら文句の一つも出るところだが、梅の最後の握手会なのだ。
握手を終えて帰ってくる人の顔を見ると、
溢れ出る涙を隠すこともできない人が少なからずいるではないか。
梅を思う心はみんな一緒である。そう思えばこそ、全く寛大な気持ちになることができた。
最後のお見送りもあっさりとしたもので、そこも梅らしさが出ていてよかったと思う。

幸運にも私は梅の卒業公演に当選したため、
劇場に来れない全ての梅推しの人たちの思いを背負って、
これまで生きてきた中で一番の声を出して応援しようと思う。
大声コンテストで優勝した小学2年生のあの頃より、もっとである。
突然の卒業発表で大勢のファンを泣かせた罪な女を、今度はこちらが泣かせてやりたいが、
さあどうなることやら。
とにかく今は、悲しさよりも寂しさよりも、梅本泉の集大成が楽しみで仕方がない。
いいもの、見せてくださいよ。

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